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玄関を明るくする方法。窓位置・ハイサイドライト・ドアガラスの選び方まで

2026.01.05

 

 

玄関は家に入った瞬間の「第一印象」を決める場所です。間取りが良くても、玄関が暗いとどこか狭く感じたり、湿っぽい印象になったりしてしまいます。一方で、玄関はプライバシーや防犯の観点から大きな窓を取りにくく、リビングのように開口部で解決しづらいのも事実です。
そこでこの記事では、玄関を明るく見せるだけでなく、実際に採光量も確保しながら、生活のしやすさとデザイン性も両立するための考え方をまとめます。窓の位置、ハイサイドライト(高窓)、玄関ドアのガラス選びまで、設計の打ち手を具体的に整理していきましょう。

 

 

玄関が暗くなりやすい理由を先に知っておく

 

玄関が暗い家には共通点があります。まず多いのが、玄関が建物の中央寄りに配置されていて外壁面が少ないケースです。外部に面する壁が短いと窓を取りづらく、光が入る経路が限られます。次に、玄関まわりにシューズクロークや収納、階段が集まりやすいことも原因になります。壁が増え、光が奥まで届かない間取りになりやすいのです。
さらに、道路や隣家との距離が近い敷地では、視線対策として窓を小さくしたり、型板ガラスやすりガラスで光を落とし気味にしたりすることがあります。採光とプライバシーを両立する設計ができていないと、結果的に昼間でも照明が必要な玄関になってしまいます。

 

 

明るさづくりは「光の入口」と「光の通り道」を分けて考える

 

玄関を明るくするコツは、窓を大きくすることだけではありません。重要なのは、外から光を入れる入口を確保し、入った光を玄関の床面や壁面に反射させて通り道を作ることです。
入口があるのに暗い玄関は、光が落ちる場所が限定されている場合が多いです。たとえば窓の位置が高すぎて床が暗い、窓の前に壁や収納が立っていて光が遮られる、床や壁が濃い色で光を吸収している、といった要因が重なると「明るい窓があるのに玄関は暗い」という状態になります。設計段階では、光がどこに落ち、どこで反射して広がるかをイメージしながら計画するのが効果的です。

 

 

窓位置で差がつく。玄関採光は“正面”より“横”が効く

 

玄関に窓を付けるとき、多くの人が「玄関正面の壁に小窓」を思い浮かべます。もちろんそれも有効ですが、明るさを体感しやすいのは玄関の“横方向”から入る光です。人の目線は、玄関に入った瞬間に正面よりも空間全体の明暗差を拾いやすく、側面から回り込む光のほうが「明るい玄関」と感じやすい傾向があります。
たとえば、玄関框(かまち)付近の側面に縦スリット窓を入れると、床面に光が落ちやすくなり、昼間の照明依存を減らしやすくなります。床が明るいと空間の体感が一気に変わるので、玄関では壁より先に「床に光が当たる設計」を狙うのがポイントです。

 

 

ハイサイドライト(高窓)は“見られずに明るい”を作れる

 

敷地条件が厳しく、視線や防犯で窓を取りにくい場合に強い味方になるのがハイサイドライトです。高窓は隣家や道路からの視線が届きにくく、プライバシーを守りながら採光量を確保できます。特に北側玄関や、隣家が近い区画では、腰高窓よりも高窓のほうが計画しやすいことが多いです。
ただし、高窓は“光が入るだけ”で終わらせないことが大切です。高い位置から入った光は壁面を明るくしますが、床まで届きにくい場合があります。そこで、壁や天井の色を明るめに整え、光を拡散させる仕上げを選ぶと効果が出ます。玄関ホールが長い場合は、光が届く範囲が限定されるため、廊下の途中にもう一段の採光計画を入れるか、室内側から光を回す設計とセットで考えるのが安心です。

 

 

玄関ドアのガラスは「明るさ・防犯・冷え」を同時に見る

 

玄関を明るくするうえで、玄関ドアの採光部は非常に効きます。ドアにスリットガラスや採光窓があるだけで、日中の光が玄関に届きやすくなります。さらに、ドア採光は“窓を増やす”よりも計画がシンプルで、外観デザインとも合わせやすいのが利点です。
一方で注意したいのが、防犯と断熱です。採光部が大きいと外からの見え方が気になりやすく、夜間は室内の明かりが漏れて在宅状況が分かりやすくなることがあります。ガラスの種類は、透明よりも型板やすりガラス、または視線を散らす意匠ガラスなど、プライバシー性の高いものを選ぶと安心です。断熱面では、玄関ドアの性能が住まい全体の快適性に影響するため、採光付きでも断熱仕様が確保できるかを必ず確認しましょう。明るさだけを優先すると、冬の冷えや結露につながるケースがあるため、ドア選びは“採光+断熱+防犯”を一緒に判断するのが正解です。

 

 

室内側から光を回す。「抜け」を作ると玄関は明るくなる

 

外からの採光だけでなく、室内側から光を回すのも王道の方法です。玄関ホールとリビングの間に壁が多いと、玄関は独立して暗くなりがちです。そこで有効なのが、室内窓やガラス建具、欄間(らんま)的な開口を使って、リビングの光を玄関側に届ける設計です。
たとえば、リビングドアにガラスを入れたり、玄関ホールの一部を室内窓で抜いたりすると、玄関は日中の自然光だけでなく、夜間も柔らかい光が回り、安心感のある雰囲気になります。もちろん、来客時に生活感が見えないようにする配慮も必要なので、ガラスは透明よりも半透明を選ぶ、視線が抜ける方向をずらす、腰壁をつくって目線を切るなど、プライバシーとセットで設計するのがコツです。

 

 

反射と色で“体感の明るさ”はさらに上げられる

 

採光計画と同じくらい効くのが、内装材の反射と色です。玄関は面積が小さいぶん、床・壁・天井の色が体感に直結します。暗く見える玄関は、床や壁が濃色で光を吸収していることが多く、照明を強くしても「明るいのに重たい」印象になりがちです。
明るさを狙うなら、壁は白~明るいベージュ、天井も明るめ、床は中明度の木目や石目が扱いやすい選択です。鏡の配置も効果的で、正面ではなく側面に置くと反射が自然になり、空間の奥行きも出ます。重要なのは“やり過ぎないこと”で、反射素材を増やしすぎると落ち着かない玄関になるため、光を受ける面を一つ決めて整えると上品にまとまります。

 

 

最後に。敷地条件が厳しいほど「組み合わせ」で解決する

 

玄関の明るさは、窓を一つ増やせば解決するほど単純ではありません。道路の向き、隣家との距離、玄関の位置、収納の取り方、ドアの仕様などが絡み合います。だからこそ、採光の打ち手を一つに絞るのではなく、窓位置、ハイサイドライト、玄関ドア採光、室内側の抜け、内装の反射といった方法を、敷地条件に合わせて“組み合わせる”のが最も失敗しにくい進め方です。
もし「昼間でも暗い玄関になりそう」「視線が気になって窓が取れない」「玄関は明るくしたいけれど防犯や寒さも不安」という場合は、間取りの早い段階で採光の方向性を決めておくと安心です。玄関は毎日通る場所だからこそ、ほんの少しの設計の差が、暮らしの心地よさに大きく効いてきます。