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建物代だけ見てない?「総額」で考える家づくりのお金

2025.12.22

 

 

家づくりの相談で「この間取りでいくらくらいですか?」というご質問をよくいただきます。もちろん建物本体の価格はとても大切です。しかし、家づくりにかかるお金は「建物代」だけではありません。土地代や諸費用、引っ越し費用、家具・家電まで含めた「総額」で考えておかないと、後になって「想像より数百万円オーバーしてしまった」ということにもなりかねません。
このコラムでは、家づくりのお金を「総額」で捉えるための考え方を分かりやすく整理していきます。

 

 

なぜ“建物価格”だけを見ると危険なのか

 

住宅会社のチラシやホームページを見ていると、「◯◯坪◯◯万円〜」といった建物価格が目に入ります。ここだけを見ると、「この金額なら自分たちでも建てられそう」と感じる方も多いはずです。
しかし、そこに含まれているのはあくまで「建物本体工事」の一部であることがほとんどです。実際には、基礎工事や外構工事、給排水工事、設計費、申請費用など、さまざまな費用が加わっていきます。さらに、土地から探す場合は土地代、仲介手数料、登記費用、ローンの手数料や保証料など、建築以外のお金も必要になります。
「建物代だけ見て契約したら、最終的な見積もりが当初より何百万円も増えていて驚いた」というお話は、残念ながら珍しくありません。大切なのは、最初から「この家づくりにかかるお金の総額はいくらになりそうか」という視点で話を進めることです。

 

 

家づくりの“総額”は何でできている?

 

それでは、家づくりの総額はどのようなお金で構成されているのでしょうか。大きく分けると、土地に関する費用、建物に関する費用、そして諸費用や入居準備費用に分けることができます。
土地に関する費用としては、土地代金はもちろん、売買契約時の印紙代、不動産会社への仲介手数料、登記関連の費用、場合によっては造成費用や地盤改良費用が含まれます。高低差のある土地や、地盤が弱いエリアなどでは、この造成や地盤改良の費用が大きく膨らむこともあります。
建物に関する費用には、建物本体工事のほかに、照明やカーテン、エアコンなどの設備費、外構工事(駐車場やアプローチ、フェンス、植栽など)、給排水の敷地内工事、場合によってはガスや浄化槽の工事費用も含まれます。
さらに、諸費用として、住宅ローンの事務手数料や保証料、火災保険・地震保険、各種税金、引っ越し費用、新しく購入する家具・家電なども必要です。これらを一つひとつ見ていくと、「建物価格が予算内だから大丈夫」とはとても言い切れないことがわかります。

 

 

見落としやすい“プラスαの費用”たち

 

総額を考えるうえで注意したいのが、「気づいたら増えていた」という費用です。代表的なのは、外構工事とインテリア関連費用です。
外構工事は、建物の見積もりとは別で考えられていることが多く、「とりあえず最低限で」とスタートしたはずが、打ち合わせをするうちにカーポートや門柱、フェンス、庭のテラスなど「せっかくなら」と少しずつ追加していき、気付けば数十万円〜百万円単位で増えていたということもよくあります。建物と同じように、外構にも「これだけは外せないもの」と「後からでもできるもの」をあらかじめ整理しておくことが大切です。
また、引っ越し後に必要になる家具・家電も見落とされがちです。新居の間取りに合わせてソファやダイニングセットを買い替えたり、大型の収納家具を購入したり、テレビや冷蔵庫、エアコンを新しくしたりすると、それだけでかなりの金額になります。特にエアコンは部屋数分必要になることが多く、1台あたりの本体価格と取り付け費用を考えると、トータルでかなりの負担になることもあります。
このほかにも、「せっかくの新居だから」とカーテンや照明をグレードアップしたり、入居前にカーテンレールや物干し金物、宅配ボックスなどを追加したりと、細かな費用が積み重なっていきます。これらは暮らしの快適さに直結する部分でもありますが、最初から「このくらいは必要になりそう」とおおよその金額を見込んでおくと安心です。

 

 

“総額”から逆算して建物の予算を決める考え方

 

では、具体的にどのように総額を考えていけば良いのでしょうか。おすすめしたいのは、「建物の予算を先に決める」のではなく、「家づくりにかけられる総額の上限」をまず把握し、そこから逆算していく方法です。
最初のステップは、家計全体から「無理のない返済額」を考えることです。毎月の住宅ローンの返済額だけでなく、教育費や車の維持費、老後の備えなど、今後増えていく支出も含めてシミュレーションすることが大切です。金融機関の“借りられる額”はあくまで目安であり、“返していける額”とは必ずしも一致しません。ご家族のライフプランに合わせて、精神的にも家計的にもゆとりを持てる範囲を見極めましょう。
次のステップとして、その総額の中から土地にかかる費用、諸費用、外構や家具・家電にかかりそうな金額をざっくりと差し引きます。すると、自然と「建物本体にかけられる予算の目安」が見えてきます。「建物はいくらくらいまでに抑えた方が良さそうか」が分かれば、プランの打ち合わせの進め方や、仕様の選び方も現実的になります。
こうした逆算の考え方をせずに、「まずは理想を詰め込んだプランと仕様を決めて、あとで総額を確認する」という順番で話を進めると、どうしても最後に大きな削減が必要になり、後悔につながってしまうことがあります。最初から総額を意識しながら、「どこにお金をかけて、どこを抑えるか」を一緒に整理していくことが、満足度の高い家づくりへの近道です。

 

 

将来のランニングコストも“総額”の一部と考える

 

家づくりの総額というと、「契約から引き渡しまでに支払うお金」に目が行きがちですが、実は入居後にかかるランニングコストも、広い意味では総額の一部と考えることができます。
例えば、断熱性能や気密性能が高い住宅は建築時のコストが少し上がる場合がありますが、その分、冷暖房にかかる光熱費を抑えられます。逆に、建築コストを優先して性能を落としてしまうと、毎月の光熱費が高く、夏も冬もエアコンが手放せない暮らしになってしまうこともあります。30年、35年という長い時間で見れば、性能にかけたお金が結果的に家計を助けてくれることも多いのです。
また、外壁材や屋根材、設備機器の選び方によって、10年後、20年後に必要になるメンテナンス費用も大きく変わります。最初の費用だけでなく、「どのタイミングで、どれくらいのメンテナンス費用が発生しそうか」という点も、総額のイメージに入れておきたいポイントです。「建てるときに少しお金をかけてメンテナンスを減らすのか」「初期費用を抑えて、その代わり定期的にかかる費用を受け入れるのか」。ご家族に合ったバランスを考えながら選択していきましょう。

 

 

住宅会社と“お金の話”をしやすくするコツ

 

総額を意識した家づくりを進めるためには、住宅会社とのコミュニケーションも大切です。「お金の話はちょっと聞きづらい」と感じる方もいらっしゃいますが、むしろ早い段階で「このくらいの総額で考えています」と正直に伝えておくことが、安心への第一歩です。
そのうえで、「この予算の中で実現できること」「予算を超えてしまいそうなポイント」「削っても暮らしの質が大きく落ちない部分」などを一緒に整理してもらいましょう。また、見積書をチェックするときには、「どこまでが建物本体で、どこからが付帯工事や諸費用なのか」「外構はいくらくらい見込んでいるのか」「今後追加になりそうな項目はあるか」といった点も確認しておくと安心です。
分からないことや不安なことがあれば、その都度質問していただいて構いません。むしろ、「なんとなくモヤモヤしたまま話が進んでしまう」ことの方が、後悔につながりやすくなります。住宅会社は、間取りやデザインだけでなく、お金の面でも家づくりをサポートするパートナーです。遠慮せずに相談しながら、総額のイメージを共有していきましょう。

 

 

まとめ:総額を意識することが“安心の家づくり”につながる

 

家づくりにかかるお金は、建物価格だけを見ていても全体像は見えてきません。土地に関する費用、建物本体と付帯工事、諸費用、外構、引っ越しや家具・家電、さらに入居後の光熱費やメンテナンス費用まで含めた「総額」で考えることが大切です。
最初に家計全体から無理のない総額を設定し、そこから逆算して建物の予算や仕様を決めていくことで、「気付いたら予算オーバーしていた」という事態を防ぐことができます。そして、そのプロセスを住宅会社と共有しながら、一つひとつ確認して進めていけば、お金の不安を減らしながら、理想の暮らしに近づいていけるはずです。
家づくりは、ご家族にとって大きな決断です。同時に、これから何十年も続く暮らしの土台をつくる、大切な時間でもあります。建物の見た目や間取りだけでなく、「総額」というお金の視点も大切にしながら、安心してスタートできる家づくりの計画を立てていきましょう。